人獣共通感染症は、ヒトから動物、あるいは、動物からヒトに感染する病原体により引き起こされる病気です。インフルエンザ、エボラ出血熱、結核など、公衆衛生上の大きな問題となる疾病が多く含まれるだけでなく、COVID-19のような新規のヒト感染症の大部分が、動物の病原体に由来する人獣共通感染症であると考えられています。さらに自然界には、ヒトに感染する可能性を持つ病原体が100万種存在するという推定もあり、このリスクをどのようにコントロールするかは、世界的な課題の1つになっています。
SDGsの目標3.3には、「2030年までに、エイズ、結核、マラリアおよび顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症およびその他の感染症に対処する」ことが挙げられています。ここで、エイズはサルを由来とするHIVによる感染症、ヒトの結核菌が動物でも結核を引き起こし、マラリアの病原体の一部はサル由来であることから、SDGsで具体的に名前のあがるこれらの疾病は人獣共通感染症でもあります。加えて、COVID-19の次、さらにその次の人獣共通感染症が発生すると考える研究者も多く、その意味でSDGsの枠組みを超えた感染症対策が必要とされています。
そこで、我々人獣共通感染症国際共同研究所は、人獣共通感染症のコントロールを可能とする体系的な学問を確立することを目指し、具体的には、①感染症病原体の自然宿主動物の同定と伝播経路の解明、②病原体の宿主域・病原性決定因子の分子基盤の解明、そして、③予防・診断・治療法の開発の3つのアプローチで研究を進めています。