持続可能な未来を共につくる
北海道大学は、2026年に、創基150年を迎えます。
その創基150年に向けて、本学は、「世界の課題解決に貢献する北海道大学へ」と題した近未来戦略を掲げています。
壮大な使命ではありますが、その実現は、自身の身近な課題を解決することから始まり、その小さな日常の努力が、世界の課題解決に繋がります。
「SDGs(持続可能な開発目標)」に取り組む姿勢として、Think Globally, Act Locallyという行動規範が唱えられています。
これは、言うまでもなく、世界のことを考えながら、日々、目の前の事柄に一つ一つ向き合うことの大切さを伝えています。
そのために、私たちに求められるのは、自分自身の考えを持つこと、そして、diversity、多様性の尊重です。
現在の世界では多様性が重視されていますが、多様であることは、決して容易なことではありません。
私たちは、多様性の厳しさと緊張感を経験しつつ、これを克服し、力に変える必要があります。そのためには、単に、海外の文化や人々に触れることばかりでなく、多様な学問領域に触れ、異なる考えの人々と意見を交わすことが必要です。
それは、社会変革、イノベーションを起こす知の拠点として期待されている大学にとって、最も重要なことでもあります。
札幌農学校の初代教頭であるWilliam Smith Clark博士が赴任したのは1876年です。この極東の小さな異国の地で、多くの困難に遭遇したものと想像します。そうした中でも、クラーク先生は、本学の基本理念である「国際性の涵養」の種を蒔いてくれました。
本学の前身である札幌農学校の第2期生である新渡戸稲造博士は、国際連盟の初代事務次長として国際舞台で活躍し、さらに、内村鑑三や有島武郎は、社会運動や文学活動を通じて、日本社会に大きな影響を与えました。彼らは、社会的弱者や世界の片隅にいる人々に寄り添う精神を私たちに伝えてくれました。
現在の私たちは、多様性の尊重、カーボン・ニュートラルの実現、ポスト・コロナの社会創造など、新しい持続可能な社会の在り方が問われる、歴史上の大きな転換点にいます。
北海道大学は、先人の知恵を受け継ぎ、クラーク博士が唱えた”lofty ambition”(高邁なる大志)の精神の基、みなさまとともに、持続可能な未来をつくってまいります。
第20代 北海道大学総長
寳金 清博