帝国主義は国家が推し進めた対外膨張政策です。帝国主義は必要か不要か、善なのか悪なのか、について当時もたくさんの議論がありました。幸徳秋水は1901年に、帝国主義を「20世紀の怪物」と呼び、他を苦しめるために、まず自ら苦しむ非科学的なものだとしました。膨張政策は全く日本の利益にならないとして小日本主義を唱えた石橋湛山の主張は有名です。しかし、日本の膨張政策は大きなリスクを抱えたまま推進され続け、結局、悲劇的な大戦争に至ります。その過程で科学的な利益・リスク評価ができていたのか、機能不全に陥りかねない国家統治システムが放置されてはいなかったのか、帝国主義を軟着陸させる道はなかったのか。日本史学研究室(権錫永教授)では、「いつか来た道」へと私たちが迷い込まないために、歴史を評価し、選ばれることなく可能性のままに終わった選択肢を考えることを研究課題として取り組んでいます。何のために、どんな未来構想の下で推進されているのか分からない、危険な政策は、目を凝らせば、今の時代にもあることが分かります。