北海道大学は、国立極地研究所、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と連携して、北極域研究強化プロジェクト(ArCS Ⅲ:Arctic Challenge for Sustainability Ⅲ)を開始しました。ArCS Ⅲは国内最大規模の総合的な北極研究プロジェクトで、文部科学省・環境技術等緩急開発推進事業費補助金事業の支援を受けて、2025年4月1日より2029年度末まで実施されます。
北極域は地球温暖化の影響が最も顕著に現れている地域であり、その自然環境の急激な変化は、中緯度を含む地球全体の環境や生態系にも大きな影響を与えています。したがって、北極域の持続可能性に関する社会的課題の解決に貢献するために、分野横断型研究の発展が求められています。また北極域の観測空白域を解消して環境変化の実態を把握し、それに基づいて将来予測の信頼性を向上することが喫緊の課題です。
本プロジェクトは、2011年度開始のGRENE北極気候変動研究事業からArCS、ArCS IIと続いてきた日本の北極域研究プロジェクトをさらに発展させたものです。下の図に示すように、3つの戦略目標を基にした10の研究課題とそれを支える7つの研究基盤で構成されています。観測インフラ(観測船、地球観測衛星など)やシュミレーションシステム、データシステムなどを活用し、極域環境の実態把握を進めると共に、分野横断的な北極域研究コミュニティーの強みを活かした新規分野開拓、次世代研究者の育成、社会的課題への意識の醸成を行います。プロジェクトゴールである「北極域の環境と社会の変化に起因する社会的課題の解決に向けた総合知の創出」を実現し、北極域研究・北極域政策において日本が国際的な使命を果たすことへの貢献を目指し活動していきます。
北海道大学からは、自然科学、人文社会科学、工学など幅広い分野の研究者がArCS Ⅲプロジェクトに参画しています。特に「気候災害課題」では地球環境科学研究院・佐藤友徳教授、「生物多様性課題」では水産科学研究院・上野洋路教授が、それぞれ課題代表者として研究をリードします。またこれまでに実績のあるグリーンランドで、現地コミュニティーとも連携した分野横断型の研究を継続します。さらに北極域研究センターを中心として、次世代の北極域研究者を養成する人材育成事業を担っていきます。若手研究者や大学院生を北極域を含む海外に派遣する他、国内外での実習や特別講義など総合的な極域教育プログラムを提供します。

ArCS Ⅲプロジェクトの全体構成とプロジェクトゴール。

北極を中心とした地図(北極環境研究コンソーシアム・国立極地研究所発行の地図を加工)。 夏は白夜、冬は極夜が訪れる北緯66.5度以北を北極域と呼びます。

グリーンランドの街並み

北大大学院生によるグリーンランドでの氷河調査