ボリビア

教授 澤 洋文

所属:人獣共通感染症国際共同研究所

専門分野:ウイルス学、細胞生物学

研究のキーワード:人獣共通感染症、ウイルス、疫学調査、抗ウイルス薬、病原性

出身高校:小樽潮陵高校(北海道)

最終学歴:北海道大学大学院医学研究科

HPアドレス:http://www.czc.hokudai.ac.jp/pathobiol/

※この記事は「知のフロンティア」第4号に掲載した記事を、ウェブ用に再編集したものです。

何を目指しているのですか?

アフリカの草原で野生動物を採集

人獣共通感染症野生動物と共に穏便に生活してきた微生物が、ウシやニワトリなどの家畜、家禽、ヒトに感染して発生する感染症です。最近の地球環境の変化により、デング熱を媒介する蚊が生息する地域が青森まで北上している様に、動物の生態と行動圏が変化してきました。また、野生生物が生活している地域と人間が暮らす社会の境が無くなってきており、微生物がウシ、ウマ、ニワトリ、ヒトに感染する機会が増えています。さらに、外国との観光客の往来、食用の肉、動物の輸入等が増えてきていることから、人獣共通感染症が日本に侵入する危険度は益々高まっています。 最近、日本ではダニ媒介性脳炎、デング熱、重症熱性血小板減少症(SFTS)、インフルエンザ等の人獣共通感染症が次々に発生しています。また、国際社会でも、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)、エボラウイルス病、ジカ熱等の人獣共通感染症が人々の生活を脅かしています。

高度封じ込め実験施設で新規ウイルスを単離

人獣共通感染症リサーチセンターは、北海道大学に2005年に設置された新しい機関です。私達は、人獣共通感染症の先回り対策をとるために、アフリカ、南米のフィールドで、野生動物に潜む人獣共通感染症の原因となる微生物の起源と自然界における存続様式、家畜、ヒトへの侵入経路、感染と流行に関与する要因を解明しようとしています。また、人獣共通感染症の克服に向けて、予防法、診断法、治療法を開発しています。さらに、国際社会を舞台にして活躍する人獣共通感染症の対策を担う専門家を養成しています。

これまでにしてきたこと

北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターは多くの外国諸国と共同研究を実施して、学生、若手研究者の相互の交流による人材の育成、感染症等を対象とした共同研究を継続しています。 2007年には、ザンビア大学に研究室を設置して、共同で人獣共通感染症に対する先回り対策をしています。私達はこれまでに上記の写真で示す様にボリビアのアマゾン支流のジャングルを2度に渡り訪れ、またザンビア共和国を50回以上訪問し、20種以上の新種のウイルスを見つけてきました。さらに、これらのウイルスがどの病気と関係しているかを調べて、その結果を国際社会に向けて発信しています。他にも、アイルランド国立大学ダブリン校のHall教授と長期に渡る共同研究を実施し、ブラジルのフィオクルーズ研究所との3施設での共同研究として、蚊媒介性ウイルス感染症の診断法を確立して報告しております。

人獣共通感染症リサーチセンターの実験室では、生きた蚊やダニを使って、ウイルスの感染とその運び屋である蚊やダニがどの様に関係しているのかを調べています。また、塩野義製薬の3名の研究者の方々と昼夜を分かたず一緒に研究をして、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)を始めとしたウイルス感染症に効き目が有る薬を見つけようとしています。

分子病態・診断部門の大場准教授が、ザンビアで採集した蚊から単離した 直径約90 nmの、新規ウイルス株の電子顕微鏡像。

2017年8月にキューバ・ハバナのペドロ・コウリ研究所を分子病態・診断部門の大場准教授、アイルランド国立大学ダブリン校のHall教授と共に訪問し、蚊媒介性ウイルス診断法の講習会を実施した。
大場准教授が、中南米諸国、アフリカ諸国からの研修生に診断法を教授する様子。

これからの活動

国際社会で人獣共通感染症に苦しめられている人達がより良い生活を営める様に、これまでに構築した国際共同研究・教育ネットワークを活用して、人獣共通感染症の感染様式を知ることによる先回り対策を実施します。また、塩野義製薬を含めた国内外の共同研究者の方々と連携して、人獣共通感染症の予防・診断・治療法の確立を目指します。 教育面では、国際社会で感染症対策に貢献できる、若い活力の有る研究者を世界に向けて輩出します。私達の活動に興味が有れば、 http://www.czc.hokudai.ac.jp/pathobiol/ にアクセスしてみて下さい。 私共と一緒に人獣共通感染症の克服に向けて国際社会を舞台にして活躍しませんか?