近年、マイクロプラスチックの例に見られるように、海洋に廃棄される人為活動による産業廃棄物による汚染は、海洋の生態系に影響を与えるとともに、私たちの健康そのものにも無関係ではない状況となっています。また、私たちが利用してきた水産資源の多くは過剰漁獲と環境変動により激減しており、資源維持と再生は危機的状況にあります。一方で世界における水産物の需要増加は続いています。しかし、世界中で天然の魚はほぼ限界まで漁獲されているとみられ、世界の漁獲量は近年横ばいとなっています。代わりに、欧州各国、中国をはじめ多くの地域では養殖業の拡大が続いており、世界の水産物需要の増加を養殖業が支える状況にあります。
こうした中、2015年の国連サミットにおいて17の持続可能な開発目標(SDGs)が示されましたが、14番目の目標として「海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し持続可能な形で利用する」ことが謳われています。まさに本学院では「持続可能性水産科学」を実践して、海と資源そして私たちの健康を守っていくための道程を示して行かなければなりません。そのような使命を果たすため、現在の水産科学院では、「海洋・水圏における生物資源の持続的生産」と「それらの効率的利用」、さらに「海洋生態系や環境の保全」を対象に、そこで発生する課題に対し総合的に解決できる能力を身につけることを教育目標に掲げています。そして、水産科学は、地球環境や資源、特に水圏における生物資源の再生産から利用までの過程を一つシステムとして捉え管理することで持続的に利用することが可能であるという観点に立った「持続可能性水産科学」を掲げて教育・研究を行っています。